スタッフブログ

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会議・研修 2025年度第4回そとでる登録事業者研修会「カスハラ講習」開催報告

2025年11月15日(土)、「2025年度第4回 そとでる登録事業者研修会」を開催しました。
今回のテーマは「カスタマー・ハラスメント」で、受講者の皆様にカスタマー・ハラスメント(以下、カスハラ)に関する基本知識や実務としてのカスハラへの対応方法等を学んで頂きました。

■「カスハラ講習」
参加者:15名
時間:13時00分~16時00分
場所:うめとぴあ(世田谷区立保健医療福祉総合プラザ)会議室1-1、2(世田谷区松原6-37-10)

【用語解説】
カスタマー・ハラスメント:社会通念上不相当な手段や態様で事業主の就労環境を害する言動を指します。
カスハラ対策:2025年4月、「東京都カスタマー・ハラスメント防止条例」が施行され、カスハラ対策が努力義務化されました。また、2025年6月に「労働施策総合推進法」が改定公布され、カスハラ対策が義務化されました。
これにより、カスハラ対策は事業主自らがその責任にて対策を講じ、就労環境を守る必要があるということになります。この「事業主」に、「そとでる登録事業者」の皆様があたります。

 

「カスハラ講習」
講 師:ペースノーツ株式会社 長和 琢也氏
     キャリアコンサルタント 吉田 有花氏
     NPO法人「せたがや移動ケア」理事 吉原 浩一氏

① 理事長挨拶
② 講師紹介
③ カスタマー・ハラスメント「法的論拠」:吉原講師
④ カスタマーハラスメント発生防止の接客術:吉田講師
⑤ ロールプレイング:長和講師、吉田講師
⑥ 全体総括:長和講師
⑦ 質疑応答


【研修会報告】

① 理事長挨拶
NPO法人「せたがや移動ケア」吉田 正理事長より、本研修会の開催主旨等についての説明がありました。続いて、「そとでる」の事務局体制の変更等について報告がありました。


写真:NPO法人「せたがや移動ケア」吉田理事長


② 講師紹介
吉原事務局長から研修会の講師おふたりについて、プロフィールのご紹介がありました。

●プロフィール
*長和 琢也(ながわ たくや)講師
地方銀行の行員として長年勤務した後、食品製造会社の経営に携わる。現在は独立して中小企業の事務サポートやコンサルタントとしてご活躍。駒澤大学に通学されていたとのことで、世田谷区との縁も深い。

*吉田 有花(よしだ ゆか)講師
服飾コーディネーターを本職としながら、相手に敬意や配慮を示す「接遇」を勉強された後、学校・企業で幾多の授業を受け持たれた。またキャリアコンサルタントとして、多くの学生、社会人の求職者を導いてきた、「接遇の専門家」として知られる。

③ カスタマー・ハラスメント「法的論拠」
吉原事務局長より、資料に基づき、カスハラの「法的論拠」について解説が行われました。 

(資料提供:ペースノーツ株式会社 長和 琢也氏)



写真:吉原講師(左)と長和講師(右)

 
④ カスタマーハラスメント発生防止の接客術
吉田講師より、資料に基づき、「カスハラ発生防止の接客術」の解説が行われました。

(写真:吉田講師)


(資料提供:吉田 有花氏)


⑤ ロールプレイング
続いて、長和講師、吉田講師のおふたりの指導のもと、カスハラ発生時を想定したロールプレイングが行なわれました。

受講者が三人一組となって、それぞれ「運転手」役、「ご利用者様」役、「両者のやりとりをチェックする」役を担当しました。


⑥ 全体総括
長和講師より、本日のゴールについてのお話がありました。

「本日のゴールは、
1. カスタマー・ハラスメント(カスハラ)の基本を理解する
2. どこからがカスハラか、現場での「線引き」の考え⽅を知る
3. トラブル時の記録・相談のしかたと、「そとでる」の活⽤を知る
という3点を学んで頂くことでした。
東京都カスハラ条例の施行以降、カスハラ対策を講じることは事業者の義務です。事業者にとっては放置できない事案となりました。
そのことを十分認識頂き、決して他人事とせず、自分事として取り組んで頂きたいと思います」と述べられました。


(写真:長和講師)

⑦ 質疑応答
長和講師のお言葉のあと、以下のような質疑応答がかわされました。

Q: 具体的なカスハラ事案はどのようなものがあるのか?
A: 「道を間違えた事へのクレームが長引く」、「料金が高い、説明を受けていない、お金を投げつける」、「運転席を蹴る」等があります。
Q: 「サービスの中断」は移動困難者を目的地に運ぶ責務があるので、現実問題として難しいと思われる。
A: その通りでしょう。しかし、カスハラがエスカレートして、身の危険を感じるような場合、サービスの中断ができることを理解しておくことは非常に重要と考えています。


【参加者の声】(一部抜粋)
・「都のカスハラ条例に違反する内容…しかるべき対応」、「威圧的な言動に対応できない」という言葉を教えて頂きましたが、いざという時に言えるかは心配…が本音です。

・お客様だけでなく、以前看護師から「こんなことでももたもたして…」と言われたことがありました。仕事を始めた頃、「介護車なのに道を譲らないのか…」と意味不明なことを非通知電話で受けたこともありましたが、今思えばカスハラだと思います。

・現代、身のまわりは、「好き・良い」相手からの言葉は聞き流せても、「嫌い・苦手」な相手から言われれば「カスハラ!」となる。必ず写真を撮り、SNSに書く行為が当たり前のようで、嫌な世の中です。
研修の感想からは離れましたが、身を守るために、言動・行動・態度には気をつけていきたいと、改めて感じました。

・事業者としてのカスハラ対策の重要性について、再認識することができました。

・「接遇の向上」がカスハラ防止に重要な役割を果たすことについても、自らを振り返ることができました。

・初めてこのような研修会に参加しました。日頃から接客には気配りを最大限にしているつもりでしたが、さらにできていなかったことに気づかされました。とても参考になり、有意義な研修だったと感じています。

・まずは「クレームを付けられない対応をする」という、当たり前のことについて再認識する機会となりました。久しぶりのロールプレイングも楽しかったです。ありがとうございました。

・カスハラについて、より詳細な説明が聞けてよかったです。

・大変貴重な時間を頂き、ありがとうございました。カスハラについてのイメージは持っていましたが、カスハラ防止が事業者の義務であることを知り、意識をもって対処・構築する必要性を持つことができました。(他人事ではないことを痛感しました)

・実際にどのようなカスハラが発生したのか、実例をもっと知りたかったです。

・ひとつのクレームがカスハラに発展する火種になりうると思うので、基本に忠実に接客業として丁寧に対応することが非常に大切であると理解できました。また、対応に困り、どうしようもない場合には、「そとでる」が相談に乗って下さるとのことで心強いです。

・カスハラに発展しないように、日頃から対応に気を付けるよう心がけします。とても良い研修でした。


【事務局より】
「そとでる」事務局では、登録事業者様がカスハラに的確に対処できるよう、東京都のカスハラ防止条例に対応するため、以下の体制を整備しております。

⑴ 基本方針の策定
・センターとしてカスハラ防止の基本方針を明文化(定義・線引き・相談・記録・情報共有・個人情報保護・公表方法)。東京都ガイドラインの趣旨に整合。

⑵ 相談窓口の開設
・相談教育を受けた事務局員3名で一次対応(事例/グレー事例の受理→分析→関係者へ助言→必要に応じ、専門家や都のカスハラ総合相談窓口を案内)。
・相談内容の記録と保存、理事会への定期報告と分析・共有(個人情報に十分に配慮)。

⑶ 研修・伴走支援
・登録事業者に向けた研修:線引き/記録ワーク/即時応対ロールプレイ
・マニュアルの雛形と記録テンプレの提供
・クレーム、カスハラ未満の事例相談も受付
・奨励金、助成金などの活用法を紹介

登録事業者の皆様、ぜひ、カスハラ問題でも「そとでる」をご活用頂きたくお願いいたします。

 

ビジネス せたがや移動ケア「臨時総会開催 ご報告」

2025年10月29日(水)、「令和7(2025)年度 特定非営利活動法人せたがや移動ケア『臨時総会』」が開催されました(18時30分~19時00分。於:うめとぴあ(世田谷区立保健医療福祉総合プラザ)1階会議室1(世田谷区松原6-37-10))。

 

式次第

1.開会の辞

2.理事長挨拶

3.議長選出、書記任命

4.総会の成立確認

5.議事審議
     第1号議案 鬼塚 正徳理事の理事職解任の件

6.閉会の辞

 

■開会
【挨拶/議長選出、書記任命】
まず、特定非営利活動法人せたがや移動ケア・吉田 正理事長より 開会挨拶と議長、議事録署名人の選任が述べられました。

【総会の成立確認】
その後、福田 譲二議長より出席状況の報告があり、本臨時総会の成立が宣せられました。

写真:吉田理事長(左)、福田議長(右)

【出席状況】
出席正会員9名、委任状 出席正会員5名、オブザーバー出席2名
引き続き、佐藤 有利正会員よりの提案主旨説明を受け、議案審議に入りました。

【議事審議】
●第1号議案:鬼塚 正徳理事の理事職解任の件

出席正会員よりのご意見、欠席正会員よりの事前質問への回答等を経て、議長より本議案に対する賛否を諮ったところ、満場一致にて可決決議されました。

【理事長挨拶】
最後に吉田 正理事長より、閉会の挨拶がありました。

「本日をもちまして、特定非営利活動法人せたがや移動ケア・理事 鬼塚 正徳氏を解任いたしました。つきましては、鬼塚 正徳氏は今後一切 当団体・理事ならびに「そとでる」センター長・事務局長としての職務と無関係になりますので、この点を心にお留めいただき、ご対応賜りますよう、よろしくお願い申し上げます。

今後、今まで以上に覚悟をもって「そとでる」を守っていく所存ですので、本日ご出席の皆様、何卒よろしくお願い申し上げます」。

■閉会
吉田理事長の言葉をもって、「令和7(2025)年度 特定非営利活動法人せたがや移動ケア『臨時総会』」は閉会の運びとなりました。

****************************

この度の議案(解任)については誠に遺憾であり、ご利用者の皆様をはじめ、関係者の皆様、「そとでる」登録事業者の皆様に多大なるご迷惑とご心配をおかけしますことを深くお詫び申し上げます。
特定非営利活動法人せたがや移動ケアと世田谷区福祉移動支援センター「そとでる」は、本件を重大な転機であると認識し、ご利用者の皆様のための移動支援をさらに進めてまいります。
ご利用者、ご関係者の皆様、今後ともご指導、ご鞭撻のほどよろしくお願い申し上げます。(事務局)

 

本 2025年度 第3回 そとでる登録事業者研修会「使える『補助金』『助成金』」開催!

2025年9月12日(金)、今年度 第3回 そとでる登録事業者研修会「使える『補助金』『助成金』」が、20名の登録事業者の参加にて開催されました。

 

すでに開催した今年度の登録事業者研修会2回が、「身体を使う」(「普通救命講習会」)、「技術を身に付ける」(「介助技術講習会」)内容であったのに比し、今回は「頭を使う」、「知識を身に付ける」内容として企画致しました。

講師は「そとでる」スタッフの吉原が務め、配付資料、投影資料も手作りと、「内製」による研修会となりました。

 

「使える『補助金』「助成金」」

講 師:世田谷区福祉移動支援センター「そとでる」 スタッフ・吉原 浩一
(NPO法人せたがや移動ケア・理事)

参加者:20名

時間:18:30~20:00

場所:子育て支援ST梅丘会議室A,B

 

開催に際して講師・吉原より、先の「第39回 リハ工学カンファレンス in東京」にて発表した論文、「介護タクシー業界の将来展望:超高齢社会における変革と持続可能性への道筋」(以下、PPT資料4点)の要旨を説明する中から、介護タクシー業界の課題の一つに「資金調達:補助金等の活用」があること。そのために、本日の研修会を開催させていただいたことを説明しました。




  

 【研修会報告】

論文の要旨説明の後、 引き続き、「補助金」「助成金」の解説に入りました。

 ①   シニア・福祉・アクセシビリティ関連製品等の販路開拓助成事業

②   交通DX・GXによる経営改善支援行補助金「バリアフリー化設備等整備事業」

③   小規模事業者持続化補助金

④   世田谷区中小事業者経営支援補助金

⑤   カスタマーハラスメント防止対策推進事業奨励金

 以上、5つに関しての詳細説明が行われました。

 併せて、補助金・助成金を探したり、申請したりする際に必要な「GビズIDプライムアカウント」、「Jグランツ」に関しても説明が加えられました。

 その後、質疑応答や参加者自己紹介が行われ、さらにそとでる事務局から次回の研修会案内がありました。

 

【閉会挨拶】

最後に、NPO法人せたがや移動ケア 吉田理事長 よりご挨拶を頂き、閉会となりました。

「吉田理事長 閉会挨拶骨子」

「皆様、お疲れ様でした。今日の研修会は日頃の研修会とは違った内容でしたが、『補助金』、『助成金』に関しての認識が深まったと思います。若い事業者は今日説明があったような補助金・助成金を活用し、益々事業を拡大して頂きたいと思います。それが世田谷区の移動困難者の利便性向上に繋がると思います。今日は業務終了後、お疲れ様でした」。

 

【参加者の声~アンケートより】(一部抜粋)

設問① 今回の催しについて、満足度をお聞かせください。

大満足 8

満足 5

設問② 今回の催しについて、ご自由にご意見・ご感想などお聞かせください。

〇以前UDタクシーへの変更に関して東京都が120万円補助していたと、聞いています。また、福祉タクシー同様に補助されていたと聞いていました。現在、東京都で行っているのかを確認したいと思いました。

〇たくさんの補助金、助成金があることがわかりました。サイトを見てみたいと思います。

〇(補助金、助成金の申請が)必要な時にご相談させてください。

〇大変勉強になりました。

〇「GビズID」はすぐに作成しようと思います。詳しい内容を聞けたので良かったです。

〇大変参考になりました。

〇知らなかった補助金の話を聞くことができて、参考になりました。

〇大変勉強になりました。Gビズ、Jグランツ、やってみます。

〇Webサイト、多言語化、リーフレット制作を考えていたので、とても勉強になりました。

設問③ 今後開催予定の「移動支援」、「交通安全」、「介護技術」等をテーマとした研修会について、ご希望などありましたら、お聞かせください。

〇本日の補助金、助成金に関する「第2回研修会」があれば、よろしくお願い致します。

〇スロープ、リフトをしまった上で、院内介助等へ行って欲しいです。

〇タクシー利用者の声などを知りたいです。

〇次回も楽しみにしております。

〇防災について等。

〇移動支援について。

 

【事務局より】

今回、内製による研修会を試みてみました。アンケートの結果等を拝見させて頂くと、一定の成果は得られたのかと思われますが、内容としましては、もう少し深みのある説明をするべきとの反省があります。アンケートでお言葉を頂きましたが、「第2回」があれば、研鑽を積んで行きたいと思います。皆様、お疲れ様でした。

 

ひらめき 第39回 リハ工学カンファレンス in東京② 市民公開講座

第39回 リハ工学カンファレンスの最終日(8月10日(日))、市民公開講座「くらしの足の未来をデザインする─病院や買い物に行く手段がなくなる日がくる?」が開催されました。(参加:約100名)
同講座のパネリストのひとりとして、「そとでる」鬼塚センター長が登壇させていただきましたので、報告いたします。(カンファレンスの記事①はこちら

毎年、「そとでる」が協力・参加している「くらしの足をみんなで考える全国フォーラム」顧問の鎌田 実氏(東大名誉教授)が基調講演を行い、事務局長の清水 弘子氏(NPO法人かながわ福祉移動ネット理事長)がパネリストとして登壇。
他に、民間救急事業者の羽根田 孝氏(介護タクシー ケアリング代表)が、赤羽台キャンパスがある北区の事業者として話されました。

 

■市民公開講座「くらしの足の未来をデザインする─病院や買い物に行く手段がなくなる日がくる?」(以下は同会HPより)
体力の低下により交通手段が確保できなくなることは、誰にとっても身近な問題です。さらに近年、バスやタクシーの運転手不足も深刻化し、公共交通の維持にも問題が生じています。このような「交通の空白」をどのように解消し、誰もが安心して買い物や通院ができる地域を維持していくのか、このディスカッションでは、専門家や福祉有償運送事業者らを交えて、未来のくらしの足を確保するヒントを皆さんと一緒に探ります。

■基調講演
「くらしの足のいま」 鎌田 実氏(東京大学名誉教授)

■パネルディスカッション
「くらしの足をみんなで考える」
パネリスト:
鎌田 実氏(東京大学名誉教授)
清水 弘子氏(かながわ福祉移動サービスネットワーク 理事長)
鬼塚 正徳氏(「そとでる」センター長)
羽根田 孝氏(北区 福祉介護タクシー ケアリング 代表)

■日時:8月10日(日)13:30-15:00

■場所:東洋大学赤羽台キャンパス WELLB-HUB2

◆基調講演
鎌田氏は、地域交通や地域の街づくりに興味を持って東大で30年間、研究を続けていらしたという自己紹介の後、「東京ではあまり感じないかもしれないが、都営バスが毎年減便している」と話されました。続いてデマンド交通の複数の事例紹介、国交省で取り組んでいるさまざまなキーワード(地域公共交通のリデザイン、交通空白、日本版ライドシェア、自動運転等)について、スライドを用いながら話されました。

また、著書『移動困窮社会にならないために』を紹介し、今後課題となるマイカーの維持費や自由に移動できなくなる恐れがある社会を「移動困窮社会」と名付けたことなどを話されました。
そして講演に続くパネルディスカッションでは、福祉有償運送、福祉的な側面、介護タクシーの話、移動困難の中で「足の覚悟がどうなっているか」を議論していきたいと結ばれました。


◆パネルディスカッション

まず鎌田氏が、「どういう将来像を描いていくか、移動手段だけではなく街づくり全体を考える必要がある」と問題提起されました。そして「特に地方では加速が進み、人口ゼロという集落も出てくる。人口がある程度減っても持続可能な将来像を描いておきたいし、一方 大都市では人口が減少傾向と言ってもまだまだ数は多い。団塊の世代の人が高齢者後期高齢者になった時にどういう手段で動けるのか、大きな意味での街づくりを考える必要がある」と続けました。
さらに「行政、交通事業者に任せておけばいいのか。住民の側も力を合わせてどう貢献ができるか?」と投げかけました。

続いて、パネリストが一人ずつ話題提供を行いました。はじめにNPO法人かながわ福祉移動サービスネットワークの清水氏が話されました。
清水氏は、25年前から活動を始めた市民活動の現場、福祉有償運送の話、全国で 2,500とも3,000とも言われる高齢者障害者の外出支援について述べました。
そして、福祉有償運送:移動サービスについて説明。通院、日常の買い物、お出かけが可能であること。「介助したり、一緒にお買い物を楽しむということも移動サービス」と話されました。他にも、社会参加を助ける意味合いから行っているさまざまな事例を紹介した後、移動困難の解消のための取り組みについて紹介。「地域で支え合うくらしの足」として市民主体で作り上げたお出かけの取り組みは映像でも紹介され、会場で視聴している方々から多くの反応がありました。

 

2人目のパネリストとして、「そとでる」せたがや移動ケアの鬼塚が登壇。自己紹介として、50年前に世田谷区梅ヶ丘にある特別支援学校の卒業生たちと一緒に移動支援を始めた話をしました。続けて、移動サービスについて「福祉有償運転者講習会」で使用する資料を用いて説明。福祉輸送について会場の皆様に知っていただくために法律や行っていること、一般タクシーとの違い等を述べました。さらに、世田谷区福祉移動支援センター「そとでる」について紹介し、介護タクシー、NPOなど150の事業者、団体が登録していること。その仕組みについて写真を用いて説明しました。

次に登録していただいているご利用者について説明し、「そとでる」10年間の活動の中で約1万人いらっしゃること。1年間に約1,000人ずつ登録者が増えていることを世田谷区民92万人という数字や高齢化とからめて分析。ご利用者の年齢層、利用目的、利用回数等をアンケート結果と写真をもとに説明しました。そして、「駅やバス停までの500m、200mを歩けない人たちのためにどのような交通政策があるか。ご利用される方々の目的や行き先をどう把握して制度化するかを皆さんと一緒に考えていきたい」、「外出して、人と話して、からだを動かすことができる社会。そのような社会を共生社会の中でつくりたい」と結びました。

最後に、北区で民間救急を行っている福祉介護タクシー ケアリングの羽根田氏が登壇されました。羽根田氏は「介護タクシー現場の立場と現状の課題」を話され、「介護タクシー利用者は幅広く、車いすを利用するお子さんからご高齢の年配の方までいらっしゃる」こと。予約制で一般のタクシーと違い、料金と使用方法など多く異なる部分があること等を説明。問題点として、料金価格についてあげました。また具体的な介助方法や、機材の説明(車いすリクライニング、車いすストレッチャー等)をわかりやすく説明されました。他にはご利用する時間帯等、会場にいらっしゃる方々が実際にご利用される際を意識して話されました。最後に問題点として、「国と病院、地域、包括、ケアマネなどが連携して必要な人が必要な時にご利用できる仕組み。福祉車両。料金補助。助成金等、一般の利用者と介護タクシーのネットワークを充実させることができれば」と述べました。そして、「介護タクシーはありがたく思っていただける仕事。若い世代から認知してもらい、現状を変えていけることが理想的」と結ばれました。

この後、鎌田氏が進行役となって、パネルディスカッションを行いました。鎌田氏はふりかえりとして、「私はデマンド交通の話をしましたが、そこでカバーできる人は限られていて移動困難な方はたくさんいらっしゃる。3人の方からは、それぞれ日々取り組んでおられることをうかがいました」と話され、「鬼塚さんの話にあったように、これからは高齢者、特に移動困難な方が増えていく。その中で、どうやってお出かけの足を確保していくのかが大きな課題」と述べられました。

続いて清水氏が「いま、国は交通空白解消のため、官民連携プラットフォームで繋げてアプリを使って利便性を上げようという方向。その時の交通空白とは一体何だろう?」と問題提起。続けて「私たちはいつも移動困難な方、特に外出する時に誰かの助けが必要な方と一緒にいる。ボランティアの延長線上で福祉有償運送を頑張っているが、私は階段介助が難しくなってきた。まだまだ地域では色々な交通移動困難があるのに、私たちのできないことが少しずつ増えていくと、移動困難な方の外出する機会がなくなってしまうのでは? と思っている」と述べました。そして「共助や、有償運送、それを支える自治体がうまく噛み合うようになると良いと思う」と話されました。

次に、「そとでる」の鬼塚センター長が、「50年前に運転を始めた頃はバリアだらけだった。いま、社会・時代は少しずつ変わっていったと感じている」と述べました。そして、「あとは皆さんの力。社会問題に対して力を貸してもらう。くらしの足をみんなで考える全国フォーラムや、今回参加させていただいたカンファレンスのように、研究者たちが考えること、地方、東京の現場で解決策を生み出していくこと、そこから新しいことをやっていく」、「いま、チャレンジできる状況が生まれてきた。皆さんも身の回りに動けない人などいたときに、自分のできることを仲間と考えれば、色々なことができていくと思う」と期待を込めました。

3人目の羽根田氏は、「介護タクシーは、患者、利用者様、お客様の命を預かって特殊車両・特殊機材で搬送する職業。そのため、介護タクシーは高いと思われるかもしれないが、正当な料金になっているはず。もし使う機会があったら、納得いくまで介護タクシー会社に聞いてください」と発言。また、「今日の話を聞いて、皆さんが少しでも介護タクシーに興味を持って『やりたい』と思ったら、いつでも声をかけてください。僕が責任を持って教えますし、応援します」と熱く呼びかけました。

最後に、進行役の鎌田氏がパネリストの皆さんのお話をふりかえり、「今日はお出かけの足が今後どうなるか。いま、こんな状況であるというのを少しご理解いただけたと思う」と述べられ、「利用したい人の数、最低限の移動だけではなくて、週に何回もお出かけできるようにするためには、もっとサービスの供給側が頑張らないといけない。それを公共交通側とタクシー・NPO・介護タクシー・限定等で、うまく重ねて広げていくことが今後の日本にとって非常に大事。
お聞きになった皆さんも3人のパネリストの話を持ち帰って、自分では何ができるのかを少し考えていただけると嬉しい」と結ばれ、登壇された皆様に会場に集った約100名の方々から大きな拍手がおくられました。

 グループ「くらしの足をみんなで考える全国フォーラム2025」では、都市部の交通空白の話題を取り上げ、上記の市民公開講座の延長戦のような熱いやりとりが予想されます! ぜひご参加ください。

第40回リハ工学カンファレンスin神戸は、「リハ工学のこれまでとこれから─支える技術、つなぐ想い、紡ぐくらし」をテーマに、2026年8月21日(金)~23日(日) 神戸学院大学 ポートアイランドキャンパスで開催予定です。

(スタッフ・石黒)

グループ 第39回 リハ工学カンファレンス in東京① 論文発表、福祉車両展示

2025年8月8日(金)-10(日)、「第39回 リハ工学カンファレンス in東京」が開催されました。(場所:東洋大学赤羽台キャンパス WELLB-HUB2(東京都北区)、主催:一般社団法人 日本リハビリテーション工学協会、実行委員長:東洋大学福祉社会デザイン学部人間環境デザイン学科 高橋 良至教授)

同会に「そとでる」の鬼塚センター長、事務局スタッフ・吉原がそれぞれ公開講座パネリスト、論文発表者として参加したほか、福祉車両の展示・乗車体験コーナーに協力したこともあり、スタッフが複数日 取材しました。
今回のスタッフブログでは、2回にわたって カンファレンスの模様、「そとでる」メンバーの活躍を報告します。

 

「第39回 リハ工学カンファレンス in東京」
■開催概要(以下は HPほかを参照)
テーマ:「アクセシブルな未来のデザイン」
障害者差別解消法が改正され、障がいのある人への合理的配慮の提供が義務化されたが、未だに多くの制限がある。誰もがバリアを超えて要望を叶えることができる、目標にアクセスすることができる将来のあり方や、その実現に向けた技術や制度などの方策について議論し、より豊かな生活の実現を目指すことを目的とする。
開催内容:障がい者や高齢者の日常生活や職場/教育環境など、包括的なリハビリテーションを支援する技術などについて、一般セッション、オーガナイズドセッション、インタラクティブセッション、福祉機器コンテスト作品展示、企業団体展示、市民公開講座、プレカンファレンスなど。 

 
写真左より:会場入口、受付風景(8日)


■論文発表(WELLB-HUB2 3F 口頭発表会場2)
開催初日の8月8日(金)、「車いす車両乗車時の安全性」(座長:清水 弘子氏(NPO法人かながわ福祉移動サービスネットワーク))を演題テーマとした発表会場で、「そとでる」事務局のスタッフ・吉原 浩一が 論文「介護タクシー業界の将来展望:超高齢社会における変革と持続可能性への道筋」を発表しました。
吉原は会場で7番目の発表でしたが、先に発表された6名の皆様とはやや異なる立場から、介護タクシー業界の展望を発信しました。
カンファレンスに集う方々に対して、現状や担い手不足等の問題点、課題をお伝えしたうえで、今後の道筋(3つの戦略等)を発表するミッションでしたが、日々の事務局業務で培った知識・経験をもとに無事に発表いたしました。その甲斐あって、発表後に、移動支援の分野に関心がある方、参入したいとお考えの方からご質問を受けるなどのやりとりもありました。

78演題(他会場含む)のうちのひとつである発表を聞いてくださった皆様、ご静聴 ありがとうございました。


写真左より:
発表者・久内 純子さん(「シーティングエンジニアから見た車椅子の車両乗車の問題」)、「そとでる」吉原、清水 弘子座長(「車いす車両乗車時の安全確保について」)、「そとでる」石黒(取材)


■福祉車両体験乗車会、福祉車両展示会(ELLB-HUB2 なかみち広場)
8月9日(土)、10日(日)、「そとでる」鬼塚 正徳センター長が、来場者の皆様に福祉車両の体験をしていただきました。
この体験乗車会、展示会は入場無料でどなたにもご参加いただけるもので、自操式(運転補助装置で障がい者が運転することができる)車両や、車いす乗車する送迎用車両をより多くの方に知って頂く企画でした。

私たち「そとでる」の他に、NPO法人かながわ福祉移動サービスネットワーク、(株)ミクニライフ&オートの皆様が協力しており、体験される方がいらっしゃらない間に情報交換を行うなどの交流もありました。


写真上段左より:鬼塚センター長、NPO法人かながわ福祉移動サービスネットワーク、
下段左より:情報交換する乗車会・展示会メンバーたち、全員で記念撮影

協力車両:
日産 NV200バネット、
トヨタ カローラツーリング、
ダイハツ ハイゼット、
日産 キャラバン

*会場風景の写真はすべて10日(日)


■各種展示など(ELLB-HUB2 1F、3F)
開催期間の3日間にわたり、複数の会場でさまざまな企画展示が公開されました。
企業展示、「福祉機器コンテスト2025」1次選考通過作品展示、協会企画(SIG:Special Interaet Group)、学生作品展示(東洋大学大学院ライフデザイン学研究科人間環境デザイン専攻大学院生)など、多様な活動、研究の成果が展示されており、会場のあちこちで説明や質問の声が聞かれました。

世田谷区で移動支援に携わる活動を継続してきた「そとでる」が、今までに参加してきた学会やフォーラムとはやや異なるカンファレンス。けれど、研究者、技術者、セラピスト、当事者の方々と出会い、やりとりすることができた会場で、「高齢者、障がい者のQOL(生活の質)向上を目指す想いは同じ」と強く感じることができました。

 

*会場風景の写真はすべて8日(金)

 ■会場から
車いすのおもちゃ、人形、フィギュアに興味を持ち、お話をうかがいました。
展示を担当していた沖川 悦三さん(日本リハビリテーション工学協会事務局参与、関東甲信越支部長、車いすSIG代表)が、おひとりで収集されたとのこと。
神奈川総合リハビリテーションセンターに勤務されていた沖川さんは、チェアスキーの器具の開発者として知られ、チェアスキーの歴史を支えたおひとり。現在は車いすSIGとして、少年マンガ、青年マンガの作品中に登場する車いすの監修なども行っているとのことでした。


(10日開催の市民公開講座「くらしの足の未来をデザインする」につづく→) 
(スタッフ・石黒)