【短期連載エッセイ】
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瑞典(スウェーデン)日記 01
東洋大学ライフデザイン学部人間環境デザイン学科
高橋 良至
工篤憧からお送りしております
一昨年前、大学から、「来年は、海外で研究に専念して来るがよい」という、ありがたいお告げがありました。指折り数えてその日がくるのを待っていましたが、新型コロナウイルス感染症の影響で、海外に渡航することができなくなってしまいました。日頃の行いのせい? と思いましたが、世界的な流行ということは、おそらく他にもたくさんの行いが悪い人がいたはずです。
ということで、とりあえず先にその人達に反省してもらうことにして、予定より半年以上遅れて2021年10月某日、何とか目的地であるスウェーデン(瑞典)はストックホルム(工篤憧)の地に立つことができました。
この日記では、“福祉の国”と言われるスウェーデンで見たことを書きたいと思います。
メーラレン湖の畔に建つストックホルム市庁舎
はばかりながら雪隠(せっちん)へ
海外渡航には入国72時間以内の陰性証明と英文のワクチン接種証明が必要なため、出国前日にクリニックと居住地の市役所に出向きました。そして出発当日、深夜便なので夜10時近くに羽田空港国際線ターミナルに着きましたが、ほとんど人はおらず、私が搭乗する便とロサンゼルス行き以外は、翌朝9時過ぎまでのすべての便に「欠航」と表示されていました。
普段は人が頻繁に行き交うのではばかられますが、今夜は誰もいません。
研究者の業で、じっくりトイレの写真を撮って来ました。
ここの多機能トイレは、多目的ベッド、おむつ交換台、オストメイト、着替え台、非常通報ボタンなど、あらゆる設備が揃っています。また男性用の方にも、おむつ交換台や、手すりのある便座、着替え台、オストメイトがあります。ご婦人用の方には、さらに小児用小便器があります(トイレの入口に設備の案内図があります、念のため)。
羽田空港の多機能トイレ
新しい生活様式(日本)から、以前の生活様式(スウェーデン)へ
ドイツのフランクフルトで乗り継ぎがありました。ドイツもスウェーデンもシェンゲン協定加盟国なので、入国審査は最初に到着したドイツで行われます。その後の加盟国間の移動では出入国審査は省略されます。
欧州域内を行き来する便はそれなりに飛んでいるようで、空港には思いのほか多くの旅行者が行き交っていて、入国審査は長蛇の列でした。
審査官:「スウェーデンの滞在目的と期間は?」
私:「研究です。1年近くの予定です。(と言って、滞在許可証を見せる)」
審査官:「…何書いてあるか分からないんですけど。(スウェーデン語で書いてあるので、ドイツ人には読めない)」
私:「私も分かりません(胸を張って)」
審査官:「…」
このようなやりとりがありましたが、検査と証明書発行に結構な費用がかかった陰性証明と、わざわざ市役所まで取りに行った接種証明は、ちらりと確認しただけだったので、かかった費用と手間の分、じっくり見てもらいたいと思いました。
日本を発ってからずっと、周りの方は皆マスクをしています。しかし、ストックホルム空港に着いたときに、気が付きました。飛行機から降りた人たち以外、誰もマスクをしていません。普通の生活の光景に、これほど違和感を覚えるとは思いもしませんでした。
個人的には飛沫が飛ぶ距離で長時間会話などしない限り感染リスクは低いと考えていたので、マスクをしない生活に戻るのにあまり抵抗はありませんでしたが。
スウェーデンに着いた翌日からは、マスクなしの日々です。日本から2箱もマスクを持ってきたのですが、代わりにカレーのルウなど日本食を持ってこられたのではないかと、スーツケースを開いてマスクの箱を目にするたびに考えています。
地下鉄Tセントラーレン駅、マスクをしている人がいない。
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スタッフ:スウェーデンの人がマスクをしていないということに驚きました!
私:スウェーデンの面積は日本より少し大きいのですが、人口は東京都よりも少ないため人口密度は非常に低いです。人口はストックホルムなどの大都市に極度に集中していますが、それでも日本のような混雑が見られるのは街の中心部の駅近くや一部の店舗だけです。会合でもない限り、自然に互いの距離がとれるような環境です。 一部、必要と思う人が各自の判断でマスクをしています。オミクロン株の感染拡大の際は、政府から公共交通機関でのマスク着用推奨など要請があったため、私も外出時はマスクをしました。1か月くらいの間だけですが。
(次回は、「交通機関について」を掲載予定です。変更の場合、ご了承ください)
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