全ての人が居心地良く
「まぜこぜの社会」めざして続く挑戦
■「まぜこぜ」が社会を変える
── 本日はお忙しいなか、ありがとうございます。
先日、一般社団法人「Get in touch」が制作された映画『私はワタシ~over the rainbow~』を拝見しました。「TOKYO AIDS WEEKS 2017」のクロージング・イベントということでしたが、本編はもちろん、東さんと監督さんのトークを聴くことができてうれしく思いました。
(写真:2017年11月26日(日)なかのZEROホール)
東 ありがとうございます。観終わって、どんなふうに思われましたか?
── 映画の中で東さんはセクシュアル・マイノリティの方へのインタビューを通して、出演者の生き様や生きづらさを伝えてくださいました。印象的だったのは、ダイレクトに伝わってくるメッセージと同時に感じた会場の“Happyな空気”でした。「つらい内容もあったのになぜだろう?」と考えると、東さんの取材姿勢やお気持ちがまっすぐで、優しいからかと。だから映画の中のメッセージをしっかり受け止めることができて、セクシュアル・マイノリティのみならず、現代社会にあるさまざまな偏見や差別について考えたくなるのかと思いました。
東 ありがとうございます。私はもともと、女優になる前に報道に携わっていたので、インタビューや取材が好きなんです。大変なこともありますが、伝えたい、伝わらなければ伝えなかったのと同じという思いで取り組んでいます。
── そうでしたか! 映画には、障がいがある人たちも出ていらっしゃいましたが。
東 「Get in touch」は、誰もがそれぞれの個性を生かすことができる誰も排除しない「まぜこぜの社会」を目指してスタートしました。音楽やアート、映像などで活動し、障がいのある人や生きづらさを抱えた人の表現や創作活動も応援しています。
映画と同じく「Get in touch」が主催・制作の舞台『月夜のからくりハウス』では、「平成まぜこぜ一座」を立ち上げました。車いすダンサー、全盲のシンガーソングライター、ミゼット(小人)などなど、個性豊かな人たちとショーをつくりました。私たちはすでに色とりどりの人たちと生きているということを可視化する活動のひとつです。彼らもよく、福祉車両を利用していると聞いています。
佐藤 ありがとうございます。「そとでる」は“誰もが自由に外出し移動できる世田谷”にするために、公共の乗り物での移動が困難な方へ福祉限定タクシー(介護タクシー)やNPOの車を手配しています。センターには現在96社の事業所が登録し180台の車両が動いていますが、ご利用者様のご自宅までお迎えなど「ドアtoドア」で動きます。必要があれば介助も行います。
(写真:佐藤)
東 ご自身も運転していらっしゃるんですね。
佐藤 はい。私は母の介護を通して介護タクシーを知り、いつか介護タクシーを開業したいという夢を持ち奮闘しまして、今に至ります。開業して6年目になりますが、介護タクシー代表者のほとんどはドライバー兼用の1人で営業していて、過去の職歴もさまざまです。ほとんどが男性なので、これからは女性の進出を願っています。
それから「そとでる」では配車以外にも、「おでかけサポーターズ」という、ボランティアさん(登録メンバー)の協力のもと、「おでかけツアー」などを開催しています。
東 こういった活動は大切ですね。
佐藤 はい。私たちの仕事はご利用者様、ご家族と接して、人との出逢いが楽しい仕事です。ご利用者様から日々元気を頂ける仕事だと思いますし、ボランティアの皆さんも同様だと思います。
── 私たち「そとでる」のスタッフも同じ思いです。ところで先ほどお話しいただいた「まぜこぜ」という言葉が気になりますが…。
東 多様性、ノーマライゼーション、ダイバーシティ、インクルーシブ…。いろいろな言葉がありますが、「Get in touch」が使う「まぜこぜの社会」は「まぜご飯」のイメージなんです。
── ご飯?
東 まぜご飯は、いろいろな食材をその特性に合わせて切ったり、味付けをして混ぜ合わせますよね。そんな「工夫」「配慮」があれば、「まぜこぜの社会」は難しくないと思います。そして、これは「社会」にも必要なことではないかと。
── まず、それぞれの人が「工夫」や「配慮」するんですね。
東 よく「バリアフリー社会」と言うけれど、社会を変えるためにハードを変えて「まちづくりに取り組みましょう!」ではなくて。理解や知識がなくても一緒にいれば気づきがあります。気づきから「工夫」したり、ニーズに応じて「配慮」することで、私たちの内なる“バリア”もなくなり、社会のシステムも変わっていくのではないでしょうか。
■「浅く 広く ゆるく」つなげる
── 「まぜご飯」の発想から、「まぜこぜの社会」という提案へ…。とてもユニークな表現、言葉の使い方と感じました。新鮮な発想で活動する「Get in touch」のスタートは、どのようなきっかけだったのですか?
東 2011年の3・11、東日本大震災が始まりです。
被災地の避難所でのさまざまなマイノリティの人たちの生きづらさと現実を知って「社会にはいろいろな人が共存している」「個人、家族、行政、企業等々がつながらなければ!」と感じました。それで仲間たちに「つなげるための活動をしましょう」と呼びかけました。