一度乗ったら また乗りたい!
やみつきになる車をめざして----きょうも続く挑戦!
インタビュー4回目は、そとでる・登録事業者、世田谷移動ケア・理事の
外池(とのいけ)孝晋さんにお話をうかがいます。

<プロフィール>
外池 孝晋(とのいけ・たかのぶ)
1980年3月 学校法人東放学園専門学校放送芸術科卒業。
その後、テレビ番組制作の道へ。ディレクター、プロデューサーとして数々の番組を手がける。
2006年 ホームヘルパー2級取得。
2007年3月 番組制作会社を退社。
同年4月 ケア輸送従事者研修修了。普通自動車二種免許取得。
同年7月 「とのいけ介護タクシー」を開業。現在に至る。
資格: 東京消防庁患者等搬送乗務員適任証、ホームヘルパー2級
趣味: ゴルフ、ドライブ(北海道へのドライブ旅行など、車の運転が好き!)
信条: 明るく前向きに
■いまにつながる前職の経験
― 外池(とのいけ)さんは、以前マスコミにいらしたとうかがっています。
まったく異なる分野に転職されたのですね。
約30年間、テレビ番組を作っていました。開業の準備は、番組プロデューサーとして働きながら並行して行なっていました。
― とてもお忙しい業界だと思いますし、ある意味特殊な仕事だと思います。
何か現在の仕事とつながる部分があったのでしょうか?
番組の制作会社では情報番組、社会情報ドキュメンタリー、旅番組などを制作していましたが、当時の仕事についてひと言で言うと、とにかく「神経を使う」んですね。
と言うのも、テレビ業界はどうしても「人が動かなくてはいけない世界」というか、テレビ番組は「一人では作り出せない」わけです。では「人を動かす」にはどうしたら良いか?
今、ふりかえると、何よりも他者への「気くばりが大事」な仕事だったと思います。
― その「気くばり」が、現在のお仕事にもつながってくるのですね。
そうです。介護タクシーの仕事も、ご利用者さまとの関係を作る際に「一人では作り出せない」ものがあるように感じているので、気くばりは欠かせません。あとは「段取り」も共通していると思っています。
― 共通点について、もう少しお聞かせいただけますか。
私は「相手がどう考えているかを早く知りたい」と思うほうなのですが、そのために「気をくばりながら」、「次の段取りを考えて」、「こちらから提案」させていただく。現在、そのような姿勢でご利用者さまと接することが多いのですが、その手順は長く働いていたテレビ業界での経験と、とても似ているんですね。
― ご経験がすべて現在のお仕事に生きているのですね。
■ボランティア活動を通じて知った「介護タクシー」
― 転職にあたって、何かきっかけがあったのでしょうか?
実は番組制作会社にいたとき、限界を感じることがありました。
いくら良いものを作ろうと頑張っても、所属する会社が“発信する電波”を持っていないと、思うように動けない。結局、番組制作会社は放送局の出入り業者のひとつにしかなっていかないというか…。
また、テレビ業界には「視聴率」という“評価”や“尺度”がありますが、それは自己満足のような部分も大きいのです。番組制作会社で番組を作っていて、「これでいいのか?」という割り切れなさを感じることもありました。
ある日、「60歳になったとき、自分はどうなっているだろう?」「この割り切れなさはなくなっているのだろうか?」と思いました。そして、次のステップにあがりたくなったのです。そこで出会ったのが、NPO法人世田谷ミニキャブ区民の会でした。
― 会員になられたのですか?
はい。仕事が休みの日に会を訪ねました。そこではボランティアとしてかかわらせていただきましたが、土日のからだが空いている時間にお手伝いしていました。
― 何年ぐらいですか?
約2年です。2006年頃だったと思いますが、そのボランティア体験がきっかけでホームヘルパーの資格を取りました。
資格取得の際に感じたのですが、身体介助を学ぶときも、「相手の動きを読み」、「次の読みをする」、そしてまた「次の段取りをする」…つまり、どこか過去の経験と似ていると実感したんですよ。
― そのとき、過去の経験を自然に活かせるとお気づきになった。
はい。たとえば、シーツをたたむにしても段取りがありますよね。実際にはなかなか難しいというか、シーツの角をうまく折り込むことができなくて情けない想いもしたんですが(苦笑)、「ものごとを進めていくときの手順が似ているなぁ」と感じました。
― 「介護タクシー」を知ったのは、世田谷ミニキャブ区民の会でのご活動を通じてですか?
ええ、知ったことで興味がわきました。会の活動においても、ただ仕事をするのではなく、「どうやったら安全か」、「どうやったら違和感なくスムーズにできるか」を動きながら学んだように思います。
その後、ケア輸送従事者研修を受けて、開業への準備期間をもちました。
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