■これから「意識したいこと」
── さて、本日のお話を掲載するコンテンツは「ウィラブ世田谷」といいますが、東さんは以前、世田谷区に住んでいらしたとうかがっています。また、2017年度の世田谷区政85周年「第37回区民ふれあいフェスタ」(障害者週間記念事業)でもお話しされるということで、世田谷区とご縁が深いかと…。
東 「Get in touch」は渋谷区と世田谷区からご縁をいただくことが多いのですが、渋谷区は区長が広告業界にいらしたことが区政に影響していると思いますし、世田谷区は区長がジャーナリストでいらしたことからジャーナリスティック…というイメージをもっています。それぞれに特徴的ですし、福祉についての取り組みも目立っているように思います。
(写真: 2017年12月3日(日)第37回区民ふれあいフェスタ」会場でトーク(『誰も排除しない「まぜこぜの社会」をめざして』)をする東さん)
── 「ふれあいフェスタ」では、活動のご紹介をされるのですね。私たちも福祉車両の展示やブースの担当で参加しますが、東さんのお話が楽しみです! ちなみに、東さんのお近くに世田谷区内の方や「そとでる」の移動支援を利用している方はいらっしゃいますか?
東 伺ったことはありませんが、介護タクシーを利用している人から話を聞いたことがあります。
佐藤 どんなことをおっしゃっていました?
東 (ドライバーの方には)「普通に会話してほしい」、「日常がいい」という声があります。
佐藤 そうですね、普通がいいです。日常の中の自然な「移動」の手段として利用していただいて、外に出ていただく。私たちも、普通でありたいと心がけています。
東 はい。これから2020年に向けてさまざまな業界で競争しあい、サービスを考えていくと思いますが、介護タクシー業界の皆さんもどんどん競争してほしいですね。利用者からすると「“質の向上”につながっていくなら、切磋琢磨してほしい!」というのが本音です。
佐藤 ありがとうございます。現実には、具体的なアクションはまだですが、2020年に向けて意識することは多くなってくると思います。
── 特に「日常」と「サービス」という言葉を意識していくことが大切ですね。
ところで、「Get in touch」さんが意識していらっしゃることはどのようなことですか?
東 まず私たちは「デザイン」を意識しています。「見せる・体感する」こと、デザイン的にわかりやすく伝えることを大切にしていますし、そのための勉強もしています。
── ご自身のご職業や今までのご経験から、「見る」「見せる」ことによって伝わるものの大きさを大切になさっているんですね。
東 興味のない人に対して、どのようにしたら気づいてもらえるか…。
そのためには「見せる」と「魅せる」が、大事ですよね。その手段として、エンターテインメントはとても重要で、“扉をあける”大きなきっかけになります。
1日だけ上演する『月夜のからくりハウス』は“見世物小屋”と銘打っていますが、まさにそこは「まぜこぜ」の世界。
私たちがPRしている「まぜこぜの社会」の“扉をあける”には、絶好の機会だと思います。
■「Get in touch」が解散するとき
── “見世物”という言葉が刺激的というか…。いろいろな意味で衝撃を受ける人もいそうです。
東 いま「衝撃」とおっしゃいましたが、なぜ衝撃を受けるのでしょう?
それは、街が、社会が、障がいがある人に対して「welcome」じゃないからだと思うんですよ。
見て見ぬふりや、見なかったことにする。それは、障がいがある人やマイノリティの人たちの存在をなかったことにするに等しいと思います。
── たしかにそうですね。先ほどおっしゃっていた「配慮」とは異なるというか、遠慮というか。
ちょっと違うかもしれませんが、1年前、パラリンピアンの木村 敬一さんのお話をうかがう機会がありました。
そのとき、街なかで目が不自由な人に対して、どんな声のかけ方が良いだろうという話になりました。すると木村さんは、「大丈夫ですか? が一番いいです」とおっしゃいました。「基本的に僕たちは大丈夫じゃないんで、大丈夫ですか? 困っていることはありますか? と聞いてください。もしこちらがお断りしても、お気を悪くなさらずに、また声をかけてほしいです」と。
この場合は、配慮のつもりが「かえってご迷惑では?」と考えて、遠慮してしまう。それで声をかけなかったら、結局は「見て見ぬふり」につながりかねない…ということですね。
東 街や電車の中で困っている人を見たら、シンプルに声をかけますものね。「SOS!」を発している人の前を知らんぷりして通り過ぎるって、なかなかできませんよ。そういう場面でも、やはり「浅く 広く ゆるく」の思いで声をかけることができたら良いなあと思います。
── そんなふうに日常の中で互いが関わっていけば、衝撃を受けるなんてことはなくなっていきますね。
東 私は今回の舞台を最高の見世物にしていきたいと思っています。プロの表現者が素晴らしいパフォーマンスを繰り広げるので、エンターテインメントを楽しんでください。そして「まぜこぜの社会」の扉をあけるきっかけになれば、と思います。
『月夜のからくりハウス』
誰も排除しない「まぜこぜの社会」実現への思いをこめて上演。寝たきり芸人、小人プロレスなど個性あふれる30組がそれぞれのパフォーマンスを行い、ときに笑いを、ときに感動の涙を誘った。 東さんはこの一夜かぎりの「まぜこぜ一座」の座長も務めた。
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(撮影:梶山) | (出演者集合写真/撮影:惠原 祐二さん) |
(写真:2017年12月10日(日)クラブeX(品川プリンスホテル) |
── ぜひ私たちも体感してみたいです。
さて、お時間も迫ってまいりましたが、「そとでる」のご利用者様や登録事業者、スタッフ、「おでかけサポーターズ」のメンバーにメッセージをいただけると幸いです。
東 一人ひとりが「浅く 広く ゆるく」つながることができたら、社会は自然に「まぜこぜ」になっていくと思います。
「家族と福祉だけが頼り」だけではない社会。全ての人が居心地良くなる社会を目指したいですね。
いろんな考え方の人がいらっしゃると思いますが、それぞれが自発的に動けるといいですね。また、ボランティアも「できることありますか?」という感じで楽しく始められたら良いと思います。
── ありがとうございます。最後に東さんの「夢」をお聞かせください。
東 「Get in touch」が解散することです!
佐藤 実際に、目指している社会になったとき、ですね。
東 はい。「まぜこぜの社会」が実現したとき、私たちのPR活動は必要なくなると思っています。
── そんな社会になったらうれしいですね。お話をうかがって、皆で居心地の良い社会を目指していきたいと思いました。
佐藤 私たちも「まぜこぜの社会」を目指して活動していきたいと思います。本日は貴重なお話をありがとうございました。
東 ちづるさんにお話を伺ったあと、全員で記念撮影。
(写真:(左から)Yuriドライブサポート・佐藤、東 ちづるさん、
そとでる・石黒、カメラ・梶山)
(写真提供:株式会社プロダクション パオ)
2017年12月1日(金)
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取材・撮影・構成・文章:石黒 眞貴子(「世田谷区福祉移動支援センター・そとでる」スタッフ)
撮影:梶山 淳子(フリーカメラマン:2017年12月1日、10日)