同い年の友人が東京都の消防庁に勤めているのですが、彼と「救急車の適正利用」の話になったんですね。一部の方ではありますが、救急車をタクシー代わりに利用する例が増えているという話を聞いて、「それは深刻な状況だなぁ。何か自分なりに手伝えたら」と思いました。
「救急車の適正利用」とは?: 救急車の搬送患者の半数は軽症の方で、その中で、病院間の転院搬送は、約6%(4万人以上)だそうです。急を要さない出動要請のために、現場到着までの時間が年々遅くなっていると聞きます。「本当に必要とする人のために、1分1秒でもはやく救急車に到着してもらいたい」と、適正利用の意味を考えさせられました。 民間救急搬送を利用していただくことで、結果として救急車の適正利用に貢献できればこれほどうれしいことはありません。 ((株)かご屋 ホームページより) |
また、施設で介護の仕事をしている10年の間、ご利用者の方から「好きな旅行に行けない」「寝たきりになったら、もう旅行は無理なのかなぁ?」という悩みをうかがうことが多かったんですね。ですから「旅行」に関しては、介護の経験と観光バスの運転手の経験があるので「できるのでは?」と手ごたえを感じました。
― 「かご屋」さんのホームページを拝見すると、「民間救急搬送サービス」を前面に打ち出していらっしゃいますね。先ほどの救急車のお話とも関係すると思うのですが、サービスについて少しお聞かせください。
はい。救急車を利用するほどではないけれど病院に連れて行きたいとき、また、ご家族での旅行などにご利用いただきたいと思っています。
そして車いすやストレッチャー、各種医療機器を備えた民間救急搬送車に「患者等搬送乗務員」、「上級救命技能認定証」、「応急手当普及員認定証」などの資格を持ったスタッフが同乗して、通院や転院、買い物や旅行の際の移動をお手伝いします。
― 「車いす、リクライニング車いす、ストレッチャー、医療用酸素、吸引機、人口呼吸器対応100V電源、AEDなどを搭載。東京消防庁に認定を受けた民間救急搬送に特化した特殊仕様車」という記述がありますが、医療行為を継続しながら搬送するのが民間救急ですね。看護師の資格を持った方々との協力体制はどのようになっていますか?
訪問入浴の仕事をしていたときにチームを組んで働かせていただいた看護師の皆さんに、ご協力いただいています。20名ほどいらっしゃるでしょうか。
― 「いざ!」というとき、同乗いただけないと困りますものね。やはり、ご経験や人間関係が大切なんですね。
先ほど「旅行」というキーワードが出ましたが、実際は通院や施設に行くためのご利用が多いですか?
そうとも言えないと思います。車いすになっても趣味の囲碁を打ちに碁会所や花見、行きつけだった(階段しかないビル内の)美容院などの外出サポートや、旅行など、さまざまな理由でご利用される方も多いです。おかげさまでリピーター様が多い状況ですが、ご本人だけでなく、ご家族も同乗できることから喜んでいただいているケースが目立つように思います。
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提供写真:碁会所(左)や、花見(右)を楽しむご利用者 |
― 通院や施設等どうしても行かなくてはいけない場への「移動」と、前向きな楽しみのための「移動」。その両方にお力を発揮する「かご屋」さんにとって、介護タクシーの役割はどのようなものでしょう?
ご高齢の方やお身体が不自由な方の移動が可能になることで「行動範囲」が広がるのは、素晴らしいことです! 私たちが「なんのためにこの仕事をしているか」と言うと、そこに尽きると思います。
同業者にはさまざまな方がいらして、年代や開業のきっかけもいろいろですが、ご利用者の多様なニーズにお応えするためには、多様な介護タクシー、介護タクシー運転手がいたほうが良いと思っています。