だれもが立ち寄る「人間の港」めざして ─ 住み慣れた地域でいきいきと! 


「そとでる 登録事業者インタビュー」13回目は、NPO法人ヒューマンハーバー世田谷 代表理事、NPO法人せたがや移動ケアの理事でいらっしゃる隅 一清さんにお話をうかがいました。

また、本コーナー初めてのNPO法人代表へのインタビューは、「そとでる」の事務所で日ごろからやりとりの多いスタッフとふたりでおじゃまさせていただきました。



〈プロフィール〉
隅 一清(すみ・かずきよ)

略歴:高校卒業後、写真館で修業。世田谷区内で営業。「東京都営業写真家協
会」副代表を10年務める。また、「社会人山岳会」の代表を18年務め、その後、ボランティアとして1993(平成5)年、この世界に入り現在に至る。


資格:防災管理者。調理師免許。運転免許。


趣味:旅行(車でのドライブ旅行)。料理。洋画鑑賞。写真。


信条:干支がイノシシなので「猪突猛進型」で、自分で定めた方向性にはなに
がなんでも進んできましたが、最近は「老いては子に従え」で、若い人の意見や周囲の人の話に耳を傾けています。




■移動支援における「これからのNPO」を意識して



 ― 
今日はありがとうございます。「ヒューマンハーバー世田谷」さんは今、ひと月にどのくらい配車されていますか? 

 だいたい1か月に700件くらいですね。細かい配車が多いのですが。


 ― すごいですね! 「そとでる」はいつもお世話になっていますが、先日も「銀行を数軒まわりたい」とご希望されたご利用者の配車をお願いしました。

 ご予約をいただいた時点では、すべての銀行をまわりきるお時間がハッキリわ
かりませんよね。ご高齢の方だったと思いますが、ご自身で銀行をまわらないといけないご都合があるのでしょう。同様の案件は多くなってきているように感じています。


 ― 言葉は適当でないですが、私たちスタッフがお電話でうかがった際に少々把握しづらい配車を引き受けていただくことが多いように思います。本当に「助けていただいている」という感じです。
また、隅さんには2016年から「せたがや移動ケア」の理事もお引き受けいただ
いていますね。

 はい。「そとでる」に登録しているNPO事業者は現在7団体ですが、世田谷区内にはいつのまにか立ち消えになった団体もありますよね。NPO事業者は今後、減ることはあっても増えることはないと思います。だからこそ、「これから新しくNPOを立ち上げたい」という団体が出てきたときのために、お役に立ちたいのです。そのためには「そとでる」の理事会に実際に活動しているNPO団体が参加して「発言すること」が大事ではないかと思いました。
現実には、なかなかもうからないということもありますし、介護タクシーさんがどんどん増えている状況ではありますが。


 ― 「ヒューマンハーバー世田谷」のなかで、福祉移動サービスはどのようななりたちだったのでしょう?

 もともとは前代表の水間(喜美子)さんが1993年に自宅を開放して、障害者や高齢者のために活動を始めました。その後、ボランティア団体からNPO法人になりました。2008年に移動サービス事業(福祉有償運送事業)を開始しました。
「そとでる」理事会のほか、「世田谷区障害者福祉団体連絡協議会」での活動を含めて、自分たちの歴史や意味を確立し、「いま思っていること」をどんどんお伝えしていきたいと思っています。


 ― ありがとうございます。
ご利用者の側からすると、料金も含めてご利用の仕方によって、NPO団体さんは「ありがたい存在」だと思います。

 そうですね、新しい利用者様には「今までは介護タクシーを使っていました」という方も多いです。そういう場合、今まで介護タクシーを利用されていたご本人はとまどったりもするのですが、ご家族は毎月の出費である移動にかかるお金に関してシビアです。皆さん、色々と比較されているのではないでしょうか。また、私たちの側も、なるべく利用者様のニーズにあわせて、車種やその他のご要望をうかがっています。そうすることで、徐々にご利用される方も慣れてくださるし、NPOの特長に気づかれるようです。



■アットホーム。だけど「なれ合い」でない環境


 先ほどお話ししたように最初はボランティア活動から始めたのですが、その後NPO法人になって、それこそ料金のこと、賃金のことなども考えながら移動サービス事業を発展させてきた一面があります。
いま、「ヒューマンハーバー世田谷」で働いているドライバーの中には「ひと月にこのくらいの収入がほしい」と明確な希望を出す人もいますが、そのような声をなるべく聞いて、その要望に応えたいと思っています。
そのために配車を組むのはなかなかに厳しい面もありますし、どのようなお仕事も積極的にお受けする姿勢でいないと、あっという間に大きく利用料収入が減るんですよ。いま施設送迎のお仕事もやらせていただいていますが、定款に「人材派遣」という項目はなく「業務委託」というかたちですので、契約をしっかりしながら活動しています。


 ― とてもシビアな世界ですね。ドライバーさんたちの生活を第一に考えると、そうなりますよね。
NPOというとイメージでは「ボランティア」という言葉が浮かびますが、一概にそうは言えないんですね。
具体的に、求人はどのようにされていますか?

 たとえばドライバーを募集の際、ハローワークには頼めません。「基本給制」ではないので、業務形態として受け付けていただけないんですね。だから私の交友関係の中で声をかけさせていただくことが多いです。
実は6月に新人が入る予定ですが、「雇う」というのではなく「予備軍」という意識で入ってもらい、経験を積んでいただくかたちになると思います。


 ― 研修会や「そとでる」「おでかけサポーターズ」の行事で、「ヒューマンハーバー世田谷」で働いていらっしゃる方にお会いする機会があります。お話をうかがうとアットホーム、かつ、皆さんが隅さんを慕っていらっしゃるように感じます。


 たしかにアットホームかもしれません。事務所に数名集まると、午前中はお茶菓子を出したり、夜は焼きそばなどを作って食べさせることもありますから。
もっとも、ドライバーからは「隅さんは利用者さんには優しいけど、ドライバーには怒鳴る」と言われていますが…。
私たちNPOはメーターを倒すということではなく、走行距離で移動料金を出しますよね。タクシーとは異なる点を利用者様にご説明しなくてはいけない場合もあるし、基本的にドライバーの指名をお受けすることもできないので、色々とご理解をいただく必要性も出てきます。
そのあたりを含めて、きちんとできるドライバーであってほしいと思っています。そういう意味では「厳しい」かもしれません。



 ― 女性のドライバーさんも多く、皆さん、イキイキと働いているご様子が素敵でした。まさに隅さんを中心にした「チーム」なのですね。


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