八幡山一丁目だより
キッズ、YA(ヤングアダルト)におすすめの本
─ 家族、老い、介護を中心に No.2
こまったとき、相談できる ともだち。
うれしいとき、かなしいとき、そばにいる ともだち。
本をひらくと、そんなともだちに出会えるかもしれません。
「とにかく、おれたち、たのしかったよな」(本文より)
『おじいちゃんの口笛』
ウルフ・スタルク 作/アンナ・ヘグルンド 絵/菱木 晃子 訳
ほるぷ出版(初版:1995年2月28日)
(小学校中学年から)
ある日、ぼくはともだちのベッラに おじいちゃんのじまんをします。
「おじいちゃんは会うたびに、おこづかいをくれるんだ」
それを聞いて、ベッラは決めます。
「おれもおじいちゃんがほしいな。ひとりでいいから」。
そして、「年とった男の人がたくさんいる」という理由で老人ホームをゆびさすぼくの言うとおり、ベッラはホームで「おじいちゃん」をさがすことにしました。
ベッラは ひとりのおじいさんにあいさつします。
「あなたに会いにきました。花をもってきました」と。
おじいさんの名前はニルスさん。
この日から、はじめて会ったニルスさんとベッラの「おじいちゃんと孫ごっこ」がはじまります。
えっ? なんじゃ、そりゃ?
ちょっとふしぎなお話を読みすすむうち、本を手にする私たちは、
おしゃべりする相手がいる しあわせ。
人のために、うんと練習したり、努力するとわきでる ちから。
…などを感じていきます。
最後、ぼくとベッラがあげるたこが、天高くあがっていきました。
たこの しなやかさ、かろやかさは、ニルスさんとのたのしい時間 そのものです。
本をとじたあと、もう一度 じっくり、表紙の絵を見てくださいね。
作者のウルフ・スタルクさんは、スウェーデンを代表する児童文学作家です。 題名の「口笛」が印象的なこの本は、1992年にスウェーデンで出版されました。 スウェーデンでは、お芝居になったりテレビでドラマ化されているそうです。 読後、「家族ってなんだろう?」、「やさしさってなんだろう?」と考える、 独特のペーソスが心に残る作品です。 ・ドイツ児童図書賞(1994年) ・キーワード:孤独 家族 死 |
(スタッフ・石黒)(イラスト Copyright @ISHIGURO 2021)