【短期連載エッセイ】
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瑞典(スウェーデン)日記 02
東洋大学ライフデザイン学部人間環境デザイン学科
高橋 良至
YOUは何しにスウェーデンへ
スウェーデン料理といえば、バイキング料理(スモルゴスボード)が有名ですが、家庭料理では、ミートボール(ショットブラール)、ピッティパンナ、“ヤンソン氏の誘惑”が代表的です。
ミートボールはクリームソースでいただきますが、肉の臭みを消すためにコケモモ(リンゴンベリー)のジャムが添えてあります。最初は肉にジャムをつけて食べるのには抵抗があって……あ……はい、私は研究のためにスウェーデンに来ております。
ミートボール。ポテトには香草のディルを添えて。
改めて、テーマについてお話ししますと、一応テーマは2つあります。4Dプリントに関する研究と、パーソナル・モビリティ・ビークルに関する研究です。
4Dプリントは、プラスチックなどを薄く印刷し、積み重ねて立体をつくる3Dプリンタを使って、動きのある立体をつくるものです。立体の3次元(3D)に「動き」の1次元を追加して、4次元、すなわち「4D」のものを作ろうという試みで、もののデザインへの応用について研究しています。また、パーソナル・モビリティ・ビークルは、個人用の乗り物です。電動キックボードなどがこれに該当しますが、特に高齢者などの近距離移動支援を目的としたものの開発を行っています。
しかし、せっかくスウェーデンに来ているので、私の研究の基盤である福祉工学(生活支援工学)や、まちづくり、交通について知見を深めることは、研究の幅を広げるために非常に有意義であると考えています。街に出かけたりするのは、 “あくまでも”研究のためですので、その点、何卒ご理解を賜りたく。
ところでスウェーデンでは、3時にはフィーカというおやつタイムがあります。コーヒーを飲みながらジンジャークッキーを食べるのが……。
ストックホルムでSLに乗る
最近のストックホルム市内は、電動キックボードに乗っている人が多いです。いわゆる共用(シェア)するもので、道端に停まっているものをスマートフォンで使用可能にして、颯爽と走っていきます。自転車道を走ることが義務付けられており、歩道を走ることはほとんどありません。
自転車道はよく整備されていて、基本的に歩道、車道と分離されています。日本と違って人も少なく、交通環境に余裕があるので、上手くいっているのだと思います。ただ、適当に乗り捨ててしまう人もいて、街なかや公園にひっくり返っている電動スクーターが相当な数になったので、きちんと電動スクーターを管理できる会社以外は事業ができないように規制がかかりました。
さて、その他の電車やバスなど公共交通はどのようになっているかといいますと、地下鉄、バス、郊外電車、路面電車(ライトレール)、船(!)、があります。これらはストールストックホルムス・ローカルトラフィク(SL)というストックホルム県の株式会社が管理しています。感覚的には日本で言うところの都営や市営ですが、運行などのサービスは別の複数の会社に委託されています。すべてSLの管轄下にあるので、案内表示などは統一されており、とても分かりやすいです。
運賃は約500円均一です。切符(1回券)を買って90分以内であれば乗り継ぎ自由、乗り降り自由で、どこまでも行けます。遠くまで行けばお得ですが、隣駅までであればかなり割高です。そこで、1ヶ月や3ヶ月有効の乗り放題割引切符などが売られています。
切符と書きましたが、基本はSuicaやPASMOと同じICカードと、QRコードをかざす形式のスマホのアプリです。日本でも使われ始めましたが、端末にかざすだけで決済できるクレジットカードやデビットカードで、入場(1回券の購入)することもできます。現金が使えるところは地下鉄T-セントラーレン駅の改札だけで、きっぷの購入もチャージも基本はキャッシュレスです。もちろん紙幣や硬貨はありますが、現金では支払いできないところが多いです。
都心のトイレは有料で約130円かかりますが、ここでも支払いはカードです。財布からお金の出し入れがなく便利ではありますが、「もし決済システムが止まって現金を扱うことになったら、若い店員は困ってしまうのでは?」と友人が言っていました。
地下鉄。昨夏から走り始めた新型車両。
SLのきっぷで乗船できる船。これで通勤できます。 地下鉄の改札。ICカードは青枠にタッチ。
非接触クレジットカード、スマートフォンアプリ(QRコード)は左側の緑枠にタッチ。
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スタッフ:船の通勤など、「ストックホルムは水の都」なんだなぁと思いました。
ところで…、“ヤンソン氏の誘惑”についてうかがいたいです! “フィーカ”ということばは、日本にいる私たちも耳にすることが多くなりました。
私:“ヤンソン氏の誘惑”は、刻んだじゃがいも、玉ねぎとアンチョビに生クリームとパン粉をかけて、オーブンで焼いたものです。ポテトグラタンみたいなもので、スウェーデン料理の定番です。 “フィーカ”は、コーヒーやお茶を飲みながら、みんなでちょっとしたものを食べて交流を図りリラックスする、スウェーデン人にとって大切な時間です。ある会合で、「だらだらしてるとフィーカの時間がなくなるぞ」と言われ、一気に緊張感が高まりました。
“ヤンソン氏の誘惑”(部分)
(次回、「送迎サービスについて」を掲載予定です。変更の場合、ご了承ください)
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