「そとでる」のスタッフが、お世話になっている方・気になる方のもとへうかがって
“いま思っていること”をお聴きする「おじゃまします!」

第7回は、三軒茶屋リハビリテーションクリニック 院長・長谷川 幹様のもとにおじゃまさせていただきました。


 長谷川先生は障がいのある方のリハビリテーションをしながら、地域での助けあい・支えあいに取り組んでいらっしゃいます。

その取り組みの基本には「地域リハビリテーション」「生活のリハ」というお考えがあり、“障がい者、高齢者が“自分らしく生活するまちづくり”につながっています。


今回の「おじゃまします!」は、長谷川先生と古くからご縁があり、現在、往診の運転をしている せたがや移動ケアの望月監事と「長谷川先生にお会いしたい!」というスタッフ2名がお話をうかがいました。

 ●プロフィール:長谷川 幹(はせがわ・みき)さん
1974年、東京医科歯科大学医学部卒業。日産厚生会玉川病院勤務ののち、桜新町リハビリテーションクリニック院長を経て、2011年より三軒茶屋リハビリテーションクリニック院長に就任。外来診療と訪問リハビリテーションをしながら在宅の障がい者、高齢者がその人らしい生活を主体的に計画したり実践する「地域ケア」に取り組んでいる。

主な活動:
一般社団法人日本脳損傷者ケアリング・コミュニティ学会・理事長、NPO法人高齢者・障がい者の旅をサポートする会・副理事長、社会福祉法人世田谷ボランティア協会・常務理事、NPO法人たつなみ会・副理事長 ほか。

主な著作:
『リハビリ医の妻が脳卒中になった時』(共著:長谷川 幸子。日本医事新報社)、『主体性をひきだすリハビリテーション』(日本医事新報社)

●三軒茶屋リハビリテーションクリニック
世田谷区下馬2-20-11 小畑ビル101     TEL 03-5787-6110
東急田園都市線三軒茶屋駅徒歩10分。長谷川先生の他に、非常勤のリハビリテーション医師2名、理学療法士3名、作業療法士1名、事務スタッフ3名、運転手2名がチームとなって、リハビリに取り組む患者を支えている。


■病気だけではなく、「その人を診る」

 ― 長谷川先生がリハビリテーション医師になられた経緯をお聞かせください。


 僕はもともと整形外科医でしたが、始まりは1980年に鹿教湯病院(長野県)に行ったことですね。当時、脳卒中を治療する病院は湯治場にあることが多かった。鹿教湯病院の患者の8、9割の方が脳卒中で、その半数が東京からいらしていた。慢性期の方々でしたが、「腰が痛ければ整形、糖尿病や高血圧だと内科、障がいは理学療法士等」というかたちに分かれて診ていました。そのとき「医者が、障がいについても診たらいいんじゃないか?」と思ったのがひとつのきっかけです。
その後、東京・高円寺にあった伊藤病院というリハビリ病院へ行きました。そして1982年に玉川病院がリハビリ病棟を開設するということで勤務することになりました。
整形外科は「首から下」が専門ですが、脳卒中は「脳」です。ですからリハ病棟で働くことになって、もう1回、脳の勉強を始めました。



 ― 以前、先生が「大方の医者は症状を診るが、患者を診ないんだよね」とおっしゃったことが印象に残っています。


 整形外科で退院の話をすると、大変喜ばれます。でも脳卒中の方に「退院です」と言うと、ほとんど喜ばれません。最初、「なんでだろう?」と思ったけれど、それは患者さんが「まだ治ってないのに、なぜ退院なの?」という気持ちだからなんですね。
そう考えると、障がいがある方の「なぜ?」という気持ち、心理を理解していかなければ治療はうまくいかないんです。難しいことだけど、 “障がいがある人ときちんとつきあう”ことを求められるのがリハ医だと思います。
障がいがあるということは、一生のことですよね。ですから、長い間、きちんとおつきあいすることがベースにあるんだと思います。
たとえば糖尿病も一生のおつきあいです。良くするためには、その人がどう考えるかをつかまないといけません。慢性疾患はご本人と僕らが両輪となって、病気や「今後の生活」を考えながら治していかないと難しいのです。ですから「病気だけを診ていてはうまくいかない。その人を診ていないといけない」と思っています。



 ― 
リハビリをしていくなかで、患者さんにはできること・できないことも出てくると思いますが。


 僕は自分の症状をわかってもらって、そのうえで「できることがある!」と感じていただくようにしています。
ひとつのことができないと全体が「できない」となってしまいがちですが、旅行は「できないと思っていたことが、できる!」と思う良い機会なんですよ。それはレストランに行って食事することでもいいんです。人さまざまの「できる」があるわけですから、そういうことを体験していただくためにも「そとでる」の活動は良いと思います。



 ― 
「そとでる」の活動について応援の言葉をいただき、ありがたいです。
介助や 介護タクシー等の運転を通じて患者様に接する際の参考として、もう少しご利用者様・患者様の心情についてお聞かせください。


 その方を“理解”するために障がいについて質問するのはありがちですが、あまり好まれないと思います。なぜかと言うと、それまでの経過のなかで色々な人から質問されているからです。正直、「もう、ウンザリ」のところがあります。僕の場合は、同世代なら世間話から始めたり、何かお手伝いするときに「あなたの場合、どういう手伝い方をすれば良いですか?」と聞くこともあります。
今のご質問に関しては、意欲的なご利用者の場合は気を遣わずにお聞きすれば良いと思うし、医療機関に行かれる場合はご本人について情報を集めておくことが大切になってきますね。



 ― 
具体的に、特に意識したほうが良い言葉はありますか?


 「良くなってきましたね」という言葉があります。何気なく使いますが、要注意ですよ。脳卒中の人は、病気になる前の状態を基準にします。ですから「良くなった」と言う場合は一般論ではなくて、その方の比較の基準を決めてお話しする。
僕は「これから変わっていきますよ」という言い方をしますが、「この前お会いしたときより、だいぶ良くなりましたね」という言い方が良いと思います。



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