「そとでる」のスタッフが、お世話になっている方・気になる方のもとへうかがって
“いま思っていること”をお聴きする「おじゃまします!」


第6回は、社会福祉法人 世田谷区社会福祉協議会 地域福祉課 地域福祉推進係 主任・山本 学様(現・地域社協課 調整係)のもとにおじゃまして、2015年1月から3月にかけて開催された「地域福祉アカデミー」についてうかがいました。



小田急線成城学園前駅北口から徒歩3分。
成城大学や成城ホールのすぐそばに、世田谷区社会福祉協議会(世田谷区社協)はあります。同じ建物の1階には社会福祉法人 世田谷区社会福祉事業団もあり、「福祉」にかかわる人・学ぶ人にとってなじみ深い場所と言えるでしょう。


今回おじゃまさせていただいた世田谷区社協は、地域福祉の推進を目的とする、社会福祉法に定められた民間の非営利組織です。
「住民の誰もが『個人として尊重され』、『自立し』、『支えあえる』まち・世田谷」を目指して、地域の住民が支えあえる仕組みづくりや、福祉サービスの充実度・質の向上、福祉団体や機関の連携の輪を広げる活動を行なっています。

その活動の柱のひとつに「支えあおう!せたがや 世田谷区社協 福祉人材育成プロジェクト」があります。
事業には「子育て支援者養成研修」や「傾聴講座」などがありますが、2015年1月(平成26年度事業)から始まったのが「地域福祉アカデミー」。福祉を幅広く学ぶことができる地域福祉専門の研修として、全10回・14科目の講義(2015年1月7日(水)~3月18日(水))が開かれました。

実は「そとでる」のスタッフ2名(荒木、石黒)も、「地域福祉アカデミー」を受講した“修了生”。
「健康づくりの予防と対策」(松村医院 院長・松村 真司様)、「障害の基礎的理解と支援」(世田谷区障害福祉担当部 障害施策推進課・大原 隆徳様)、「認知症予防と対策」(東京都立松沢病院 社会復帰支援室長・大島 健一様)等々、医師、学識経験者、活動実践者等の専門家の講義を受けることができました。

なかでも印象に残ったのが、「地域福祉の推進演習」(駒澤大学 文学部社会学科 社会福祉学専攻 准教授・川上 富雄様)で行なったグループワークと、そこで知りあった方々との“出会い”です。

受講生が居住する地区(世田谷、北沢、玉川、砧、烏山)ごとにグループに分かれて、その地域における問題点を模造紙に書き、一つひとつの問題について解決の糸口を話し合い。さらに、グループごとにその発表を行うことで、世田谷区内の地区ごとの問題点や共通する問題を発見・確認できました。
全10回の「地域福祉アカデミー」を受講した「そとでる」のスタッフは、世田谷区に暮らす住民としての意識はもちろん、「そとでる」での業務においても地域福祉の現状や課題を確認し、改めて移動支援のニーズや必要性を理解しました。

そしてお訪ねしたのが、この「地域福祉アカデミー」の担当者・山本学さんです。今回は山本さんに、この事業の取り組みに関するお話をお伺いしました。


「世田谷区社協の取り組みのひとつに『地域の人どうしが支えあえるような仕組みづくり』がありますが、そのためには地域の人材の発掘と育成が大切だと考えています。平成26年度に実施する重要な事業として『新しい人材育成をスタートしよう』という気持ちで、調査、企画づくり、準備、実施までを経験させていただきました」

ひとくちに人材育成と言っても、地域福祉の向上を目指す方々を住民から募り、学びの場をつくって“活動”につなげていくのは簡単なことではありません。

山本さんは「2025年問題」(日本では2025年に団塊の世代が後期高齢者になることから、社会の高齢化がさらに進展すると予想されている)をキーワードに、『高齢社会白書』(内閣府編集:高齢社会対策基本法に基づき、平成8年から毎年政府が国会に提出している年次報告書。高齢化の状況や政府が講じた高齢社会対策の実施の状況、また、高齢化の状況を考慮して講じようとする施策について公表している)や世田谷区地域保健医療福祉総合計画、世田谷区社協の活動から得たデータを解析し、「2025年問題から考える地域福祉人材育成」という資料を作成しました。


「内閣府の『高齢社会白書』からは、主に団塊の世代の社会参加について調べました。世田谷区社協が積み重ねたデータからは、区内の活動者(人材)について地区ごとや年齢ごとに活動してくださっている人数を確認しました。そして、改めて団塊の世代の皆様の社会参加が必要とわかりましたが、新しく開講する『地域福祉アカデミー』を“地域福祉を知るきっかけづくり”、“住民が互いに助け合い、支えあいながらいつまでも暮らすことができるまちづくりを一緒に考えていただく場”と位置づけました」

そして集まった受講生は、世田谷区民・35名。当初の募集人員は20名でしたが、募集締め切り日以降も問い合わせが続き、その関心の高さに手ごたえを感じたそうです。

実際に10回の講義を受けた修了生からはどのような反応がありましたか?

「『普段あまり知らない問題について学べて良かった』、『さまざまな地域や年代の方々と話し合いができて有意義だった』という声をいただきました。そのようなお声をありがたく思う一方、今回はあくまでも人材育成事業の枠組みづくり、仕組みづくりのスタート。これから継続していく『地域福祉アカデミー』でどのような連携、実践が生まれていくかが大切…と感じています。
“支援をする方の仕組みづくり”だけではなく、“課題、問題を抱えた方のためになる仕組みづくり”を今後、共につくっていくための学びの場にしていただきたいです。また、熱意がある方々どうしのつながりづくりの場としていただけるとうれしいですね」

さて、受講生にとってカリキュラム、講師の顔ぶれは重要です。
開講初日に手渡されたカリキュラム一覧の充実度に、山本さんのご尽力がうかがえます。

「過去にイベントや社協事業などでご協力いただいた先生方にお声をかけさせていただきました。熱意がある受講生ほど講義内容に厳しいと思いますし、“地域にある多様な課題に向き合える視点を育んでほしい”という想いで、カリキュラムを組みました。プライマリケアで有名な松村先生のお話や、医療との連携を考えるうえで重要な大島先生のお話、そのほか世田谷区民生児童委員協議会・大森会長の講義など“実践”していらっしゃる講師の皆様のお話は皆様の中に“訴えかけるもの”があると思いましたし、今回、『実際に福祉の視点をもち世田谷のまちなかを歩いていただきたい』という想いから、地域のニーズをあぶりだす演習やグループワークを、駒澤大学の川上先生にお願いしました」


その想いは反響を呼び、無事に大プロジェクトを発進されました。
現在は別の部署で地域福祉の推進のために動いていらっしゃる山本さんですが、いま、思うことは?


「世田谷区は人口が多いですが、それは支え手の人材が多いと考えることができます。『地域福祉アカデミー』の受講によって、皆様が新たな気付きを得て、地域活動にかかわってみたいと思われたならうれしいです。“活動したいけど何をしていいかわからない”という方も、ご自身のスキルアップのため・出会いのためにご参加いただきたいと思います。
私自身は、常に『住民の皆さん誰もが、身近な誰かとつながっていけるように』という想いでいます。
そのような繋がりがあれば、いざという時や震災などの災害時においても、支えあいの共助の力が発揮できると思いますし、人と人が繋がることは“双方に力を与えること”だと思います。

だからこそ、個人と個人はもちろんですが、NPOどうしや多様な機関どうしが『互いにどういう課題があって、どのように動いているか』の情報の共有化も必須でしょう。『そとでる』の皆様とも、普段から繋がりが持てたらありがたいと考えています」


「“困っていても声をあげられない人たち”への支援の仕組みづくりは、まだまだ続きます」と話す山本さん。在宅介護、認知症高齢者、孤独死…多くの問題と直面する高齢社会において、「“いきいきと暮らしていく”には笑顔で元気な高齢者が増えていくことが大事」というブレない想いをお持ちの山本さんは、学校を卒業後、一度就職されてから「福祉」への想いが芽生えたそうです。退職後、改めて日本社会事業大学研究科に入られたという山本さんの芯の強さ、人と人とのつながりへの想いの深さに、今後の取り組みへの“熱”を感じました。


受講生に「かかわりたい」という想いと、支え手となる勇気をくださった山本さん、世田谷区社協の皆様。
ありがとうございました。


*資料提供:世田谷区社会福祉協議会

(取材:荒木 妙貴、石黒 眞貴子
  文・写真(スタッフ写真を除く):石黒 眞貴子/2015年3月、5月)