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笑いが絶えない…それが“誇り”


 ― 車庫に集まってスタッフ、スタッフでない方とわけへだてなくやりとりしているご様子をお聞きすると、改めて吉田さんのお人柄に興味をもちます。

 意外に思われるかもしれませんが、私は「合わない人とはつきあわない」のですよ。実は大学生だった頃、「人ってこういうものかな?」と思うことがあったんです。
本当はいけないことですが、私に勉強法を聞きにくる人がいてね。私はすべて教えてあげたのですが、逆に私がわからないときに聞きに行ったら、まったく教えてくれなかった。



 ― いますねぇ…自分のノートをかくしてしまうような人。

 そう。人から情報だけ聞き出して、こちらが教わりに行くと教えてくれない。そういう人は仕事をしていても同じだと思うのです。
私のところにいらしたら、だいたいの人とはつきあいますが…。“相互に”という気持ちがポイントかもしれません。「働きたい」と来てくださる人とも“相互に”を意識したいし、介護タクシーのお客さまとも同じようでありたいです。
高齢の方も障がいをおもちの方も、移動のためだけではなくて、「話したい」というお気持ちをもってご予約されると思うんです。だから、私が話すことでお客さまを勇気づけられるならそうしたいし、相手のお話もお聞きしたいと思う。
何回か乗ってくださっていると、家の中にあるものや生活のこまごましたことを話す方がいらっしゃいます。「朝、どうしても早く起きてしまうんです」とお客さまが憂鬱な声でおっしゃると、「早く起きてもいいけど、ニワトリを起こしてはだめですよ」とお答えする。そうするとお客さまが笑ってくださるんですね。


 ― 「よかったら、憂鬱なことでもなんでもお話しください」という想いもこめて、ユーモアのある会話をなさるんですね。

 自然に微笑みがこぼれるような会話ができるといいですね…。「さくら介護タクシーに乗ると笑いが絶えない」と言ってくださったら、一番うれしいです。


 ― きっとそのお気持ちは伝わっていますね。吉田さんとスタッフの方とのつきあい方。そしてご利用者さまとのつきあい方。“相互に”の気持ち、 “おたがいさま”というのが大切なのですね。



■「外に出る機会」をひとりでも多くの方に

 ― 今まで、ご利用者さまで記憶に残った方はいらっしゃいますか?

 脳こうそくの方は、リハビリの段階でずいぶん変化するんです。ご本人の「治るぞ!」と思う気持ちや、ご家族の「なんとしてでも治ってほしい!」という努力が結果につながるのではないでしょうか。ずっとご利用されている方が、少しずつ良い方向に変化していくお姿を拝見するのはうれしいですが、あまり思わしくない方に対しては「前より顔色がいいですね」とお声をかけさせていただいています。もうじゅうぶんに頑張っているのだから、「頑張ってよ」という言葉は言えないですよね。
言葉といえば、私はよく「どうして病気になったんですか?」とお聞きするんです。そうするとだいたいの方が、「仕事を一生懸命やって、会社のつきあいで飲食していたら取り返しがつかないことになった」とおっしゃる。
実はとても印象的なことがあって、私の問いかけに対して、逆に「主人が病気になる前の職業はなんだったと思いますか?」と奥さまから質問されたことがありました。そのご主人は脳こうそくを患っていたのですが、私はなぜかピン!ときたんです。でも黙っていた。すると奥さまが「医者だったんですよ」と。
医者の不養生と言いますが、毎日診察しながら、ご自分が病気になってしまったのですね。ほかにも年に1回、コンサートにいらっしゃるお客さまがいるのですが、その方もお医者さまでした。お若い頃から音楽を聴くのが楽しみで、寝たきりになられた今も行かれるのです。


 ― さまざまなご利用者さまとの出会いと対話を重ねて、これからはどのような想いでお仕事されますか?

 「困っているのに気づいていない」方々がいらっしゃいます。また、困っているだけでなく、ご自身の「〇〇したい!」というお気持ちに気づいていらっしゃらない方が多い。
そとでるでは日帰りツアーを開催していますが、お客さまにツアーの話をすると「ぜひ参加したい」とおっしゃる方が多いです。日帰りツアーは1年目で試験的な部分もありますが、一事業者としても、そとでるの運営団体であるせたが移動ケアの理事長としても、「そとに出る機会」をたくさんご用意して、多くの方に参加していただきたいと思います。


 ― 先ほどの「若い頃に音楽を聴いていたから、年に1回コンサートにいらっしゃる」方のように、過去に得た感動や楽しみを求める方、これから新たな喜びを見つける方とさまざまですね。


 はい。ご意見やご希望をうかがっていくことで、ツアーの内容や目的も広がっていくでしょう。こちら側で楽しみを作り、機会を提供させていただいて、お客さまにご参加願えたら私たちも幸せです。
また、これからは日帰りツアーだけでなく、“日曜映画上映会”や、“ミニコンサート”のように、ご本人もご家族も楽しめる催しを企画できたら良いと思います。
あと、そとでるにかかわらせていただいている立場で申しますと、配車・予約・相談だけでなく、多様な事業に挑戦していけたらと思います。もちろん、世田谷区からの大切な予算の中で知恵を絞っていくわけですから、基本はいつも「移動困難者のために」ということです。そして、「地元のことは地元の人間がやる」というシンプルな姿勢と希望をもち続けて、これからも動いていきたいです。


 ― 吉田さんは常に地元のために、「動きたい! なにかしたい!」と思っていらっしゃる。

 色々考えるようになったのは、この歳になって「人生は1回しかない」と実感するようになったから。「怒っているのも、笑っているのも同じだったら、笑って過ごして、どんどんアイデアを出したほうがいい」って。


 ― 最後にひと言、メッセージをお願いいたします。

 先ほど少し話しましたが、“走ってお金をいただく”ということでしょうか。「お客さまに乗っていただきたいから、私はこの仕事をしている」という気概をもっていたいです。
ある日曜日、車で5分ぐらいの距離を移動してほしいという依頼がありました。休日でしたし、正直「え?」という気持ちでしたが、運転後、お客さまが「今まで乗った車の中で、一番良かった」とおっしゃってくださった。その後、その方はリピーターになってくださいました。
どのお客さまも、1、2回お会いしただけでは何もわかりません。どなたも動けないで困っているのですから、私たちは動けば良いのです。これからも私はお一人おひとりとのつながりを大事にしたいと思います。



 ― 開業されるときに反対していた奥さまは、今、どんなふうにおっしゃっていますか?

 家内は、「『定年になったら旅行しよう』と言っていたのに、忙しくてそれどころじゃない」と言っています(笑)。でも最近、家族がいるっていいなあと思うんです。開業当時は慣れない仕事で、朝6時からがむしゃらに働いていた私ですが、最近も休日がほとんどなく、「仕事も大事だけど健康第一!」と言うので、「そうだね」と素直に受け止めます。そういう会話ができる存在って、ありがたいと思うのです。
この仕事を続ける以上、動けない方を助けていきたいと思いますが、これからもあれこれ会話しながら、頑張っていきたいです。


 
【インタビューを終えて】
たえず浮かべていらっしゃる笑顔…けれど時々鋭く光る瞳の奥に、ぶれない信念と強さがうかがえて…。
あふれんばかりの夢をお持ちの吉田さん。そのたたずまいに満ちる静かなパワーが、たくさんの夢を実現していくだろう“これから”を感じさせてくださいました。世田谷区民、移動困難な方々のために、よろしくお願い申し上げます。
(取材・文・写真:石黒眞貴子)