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■“その人らしく”を支援する

望月 私自身、障がいがあるお子さんの送迎で複数の施設に行かせていただいていますが、個人的な感覚で言うと障がいがあるお子さんが増えている気がします。
     



内多 障がい児全体についてはわからないので、「医療的ケアが必要な子どもたち」についてお答えいたします。日本の小児医療は世界でもトップレベルで、医療の進歩によって、かつては亡くなっていたお子さんが救われるようになりました。その一方で、退院したあとも医療的ケアが必要なお子さんは増えています。つまり、死亡率と反比例するように医療的ケアが必要なお子さんが増えているわけです。
(医療的ケアが必要な19歳以下の子どもは、全国に推計17,078人:2015年度・厚生労働省)



望月 確かにそう思います。それにしても、親御さんの心情を思うと…。



内多 僕も親御さんの心情を思うとつらい気持ちになりますが、それでも、子どもさんが生まれた時にどのような社会がつくられているかによって、親御さんの心境も変わると思うんです。
地域から受け入れられずに「すべて家族の責任で」と、家族だけに負担を背負わせる社会では、絶望的です。「もみじの家」のような「場」の存在や関わる人の存在があれば、そういう地域や社会が実現していれば、悩みはゼロにならなくても軽減されます。
だから僕らは、医療的ケアが必要なお子さんや家族を社会で支えていくべきというメッセージを送り続けているのです。
「もみじの家」はショートステイの施設なので、ご利用は最長で1回9泊10日ですが、数日間でも安心して過ごせる環境があれば、「来月、もみじの家を利用できるから頑張ろう」、「もみじの家でリフレッシュできた」と思うことができる。そういう環境を整えていくことが大事だと思います。


── 「心の支え」、「希望」ですね。2016年4月の開設から時を経て、お感じになることはありますか?



内多 相変わらずの「赤字」が悩みですが、これは公的な制度からの報酬が不十分なためです。
仮に人件費が理由だからとスタッフを削減したら、子どもたちにとって望ましい環境を維持することができなくなります。
僕らは赤字覚悟で手厚いケアを提供し、その赤字をご寄付でまかなっていただいていますが、将来は“トントン”くらいの収支でいけるようになればと思います。制度が充実して運営が安定すれば、各地に第2、第3の「もみじの家」が誕生すると思うのですが。



── 安心できる前例をつくるということですね。「もみじの家」をお手本にするために、見学にいらっしゃる方も多いのでは?



内多 そうですね。医療、福祉関係の方々、行政の方、議員の方が多いですね。何よりも、このような施設があることが、ご家族にとっての癒しになっていると同時に、子どもの成長発達にとってもメリットがある点をご理解いただきたいです。


── ホームページを拝見すると、理念、ミッション、コンセプトが掲げられていますが、「“その人らしく生きる”を支える」(下記、囲み)とありました。私ども「そとでる」もまさに、「移動」という切り口で“その人らしく生きる”を支えさせていただいているので、深く共感いたしました。
そしてもう一つ…。子を持つ母の立場で共感したのが、医療的ケア+生活介助だけではなく、コンセプトにある「子どもの個性に合わせた支援」という点です。親御さん、ご家族の休息と共に、子どもの成長に焦点が当てられていることがうれしいです。



内多 そうなんです。「命を救う」はもちろんですが、子どもが「食べる」、「寝る」以外の時間をどう過ごすか。そこが、特にお母様たちの気になさる点ですよね。
一般的に「レスパイト」は、介護が必要な人を施設に預けて、その期間、家族が休息をとる印象が強いと思いますが、「もみじの家」では、子どもの成長・発達を促すための環境づくりを重要視しています。「子どもの成長・発達を促す」という視点があると、親御さんも安心してくださるんですよ。


── 親はわが子に、少しでも豊かな人生をおくってほしいものですよね。2階にある「プレイコーナー」は職員の皆さんの眼が行き届きやすく、子どもが伸び伸び過ごせる空間。「センサリールーム」はリラックスしながらその子に合った五感を磨くことができる…等、それぞれを好ましく思いました。


○理念:“その人らしく生きる”を支える
○ミッション:新しい支援の創造
コンセプト:
1.その人自身の生活を基に、個性を尊重したサービスを提供する
2.積極的に地域と交流し、みんなで支え、育てていく社会づくりに貢献
3.医療・福祉を融合させ、子どもの個性に合わせた新たな支援モデルをつくる
(「もみじの家」ホームページより)



■運命にみちびかれて

望月 改めて、内多さんが福祉の世界に入っていらしたきっかけをお聞かせいただけますか?
     



内多 NHKの「クローズアップ現代」で代行キャスターをしていたときに、「医療的ケア児」を題材にした番組を企画制作することがありました。当時、東京で医療と福祉の専門職がタッグを組んで本格的に医療的ケア児を支えるという情報を耳にしたのがきっかけでしたが、そのときに成育医療研究センターのNICU(新生児集中治療室)を取材させていただきました。
そして、番組を放送してから約1年後、今度は「もみじの家」を立ち上げるという情報を耳にしました。そのときに、「ハウスマネージャーになりませんか」と声をかけていただいたのです。
その後、準備室を訪ねたところ、「クローズアップ現代」の取材でお世話になったドクターと再会しました。驚きと同時に、何か運命的なものを感じたのを覚えています。
僕はアナウンサーを30年続けてきて、福祉の現場で仕事をしたことはありません。本当になんの経験もない人間だったのですが、「ぜひ来てください」と言ってくださったことがとてもうれしかったですね。
さかのぼること6年前、「医療的ケア」の問題を番組で取り上げて、「社会で支えていく必要があります」と発信した人間ですから、少しでも役割が与えられたことはうれしかった。そして、「僕にできることがあるかもしれない」と、現場に魅力的なものを感じました。心が動いたのです。


── 内多さんにお声をかけた方も素晴らしいですね。



内多 声をかけてくださった方は、勇気のある方ですよね。「NHKを辞めて、福祉の世界に来ないか」とおっしゃったわけですから(笑)。


── 社会福祉士の資格をお持ちですが、その勉強はNHKに在籍していらした頃ですか?



内多 名古屋に単身赴任していたときで、時間があったんです。前々から福祉に興味があって勉強したいと思っていたので、良いタイミングでした。


── ご家族はご退職、福祉の分野へのご転身について何かおっしゃっていましたか?



内多 表立った反対は、ありませんでした。妻が「まぁ、いいんじゃない?」と言ってくれたのはありがたかったですね。子どもが3人で、一番上は社会人、下の2人は大学生ということもあり、経済的な見通しをたてやすかったのも転職に傾く要素でした。色々な要素をすべてクリアできたのは、ラッキーでした。
実は、定年まで粛々と仕事をして、定年後は福祉の資格を活かして働きたいと思っていたんです。やはり運命というか、人生、何が起こるかわかりませんね。



■頭の中は「もみじの家」のことばかり

── 内多さんは週末、各地へ講演に行かれることが多いとうかがいました。全国をまわられて、改めて「世田谷区の福祉」についてお気づきのことはありますか?



内多 実は成育医療研究センターに通院するため、遠方から引っ越していらっしゃる方も多いのです。全国的にも、医療的ケアが必要な子どもたちが多く住んでいる地域であることは確かでしょう。
また区としても対応可能な保育園の体制作りに取り組んでいますし、連絡協議会を立ち上げて関係者の意見を集約する動きを始めています。世田谷区に期待することは、スピード感を持った対応です。ニーズが高まっていることは確かですから。


── 本日、私どものPRのお時間をいただきましたが、「そとでる」についてはいかがでしょうか?



内多 移送についても同様にニーズの高まりがあると思うので、たとえば経済的に困窮している方もスムーズに移動ができるような支援の在り方を、行政と共に検討していただけたらと思います。


── ありがとうございます。ぜひともうかがいたいのですが、内多さんの「夢」はなんでしょうか?



内多 第2、第3の「もみじの家」ができることですね。
今は「成育さん(が母体)だから、こういう事業ができるんでしょ」、「成育さんだから、赤字を埋められるだけの寄付が集まるんでしょ」と言われてしまう。
繰り返しになりますが、制度が充実して運営が安定すれば、「うちでもやろう!」というところが出てくると思います。そういうニュースを早く聞きたい。
第2、第3の「もみじの家」ができれば、「成育以外でもやればできるんだ」と、さらに全国に広まっていくのではないでしょうか。
今はそれしか考えていません。夢を描くのは、そのことばかりですね。


── テレビで拝見していたときは「おだやかな方」という印象でしたが、心に燃えるような熱いものをお持ちなんですね。



内多 今はシンプルにやるべきことに向かえるし、エネルギーを集中して使うことができる環境にあることをありがたく思っています。



── 集中してお仕事していらっしゃると、ストレスや疲れはたまりませんか?     



内多 たまりません。毎日6時間は寝ていますし、休日は仕事のことを考えないようにして完全にオフにします。吉本新喜劇が好きなので、録画して観るのも楽しみですね。
あと、大事なことですが、僕は子どもが大好きなんですよ。


── 子どもさんたちも内多さんの笑顔を見たら、「私のことを好きな人だ!」と安心するでしょうね。


望月 ハウスマネージャーとして、ご利用者にお声かけをしたり励ましたりはありますか?


内多
 いえ、特にしません。ご利用する方は、励まされるためにいらしているのではないと思います。日ごろずっと頑張っていらっしゃるんだから、「頑張ってください」なんて絶対に言えない。
僕は医療のこともわかりませんし、間違ったことを言えませんから、あくまでも「施設のおっさん」だと思っています。


望月 お話をうかがっていて、なんだかうらやましいですね。私たちの仕事は送迎ですから、ご利用者の方と一緒に過ごさせていただく時間は限られています。内多さんは「もみじの家」で、子どもさんやご家族の方と共に時間を過ごしていらっしゃる。現在のようなお仕事に就いて活躍されているのは、まさに、ご人徳、ご縁のたまものと思います。


内多
 僕はただ笑っているだけですが、子どもさんやご家族に「また来たい」とおっしゃっていただけるのは本当に幸せです。毎日、「ありがたい」と思って過ごしています。


── 内多さんの描いている夢がかない、各地に第2、第3の「もみじの家」ができますようにお祈りいたします。本日はお忙しいなかお時間をいただき、ありがとうございました。


◆お話をうかがって
内多さんのお話をお聞きして、ご自身の熱い想いを胸に秘めながらも飾りや気負いなく、きわめて自然にハウスマネージャーの仕事をされていることにお人柄を感じました。また、アナウンサーからの転身、研究を重ねられての出版など、内多さんのご努力に勇気をいただくこともできました。
今後も「もみじの家」の活動が広がることを期待すると共に、「そとでる」の活動が少しでもお役に立つことができればと願っています。(望月 明夫)

(内多 勝康さん、望月副理事長、スタッフ・石黒:2018年11月)


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*写真提供・「もみじの家」:居室、浴室、センサリールームの写真

取材・構成・文章:石黒 眞貴子(「世田谷区福祉移動支援センター・そとでる」スタッフ)
撮影:梶山 淳子(フリーカメラマン)


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